「だから嫌われる」第13条嫌いの少ない人
「だから嫌われる」
第十三条 嫌いの少ない人
絶えず「あれが嫌い、これが嫌い」と嫌いばかりのべている人間がある。たいがい好きなものの少ない人間である。
好きなものの多い人間は能力も多く、心情も豊かである。
けっぺきな人間は清潔のように考えられるが、ただ小さい清潔をもっていると言うだけである。豊かな人間が清潔なものを豊かに持てないはずはない。嫌いな物の多い人は「嫌いだ」と口にださないだけでも嫌いは減少する。好きなものを多くすることだ。
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好き嫌いのない人はいません。人間の祖先である猿にして然り。あるいは犬・猫にしても然り。動物は本能的に食べ物の毒・無毒を感じ、判断します。それが好き・嫌いの原点です。
つまり生きていく大元(おおもと)のところに好き嫌いがあるのです。
動物の飼育とは人間が意図的に慣らし、好きにさせていくことです。それも食べ物というえさで釣ることによって半ば強制的に好きにさせ、同時に芸事を仕込んでいきます。それによって動物はお客様を喜ばす演技を行い、動物園に利益をもたらします。
一方、会社も社員に給与というご褒美(ほうび)を与え、会社の方針や業務内容を教育指導します。それによって社員は会社の利益のために働き、さらに、仕事を通じて人生における自己実現も図ることができるのです。
小さい頃は、好き嫌いをいうと母親に叱られ、むりやり食べているうちにむしろそれを好きになっていく場合があります。にんじんや納豆などはその好例です。勉強や運動、あるいはピアノなどの習いごともそうでしょう。
芸術や音楽あるいはプロスポーツの世界では、「三つ子の魂百まで」と超一流選手は、だいたい3つ4つから親が強制して好きにさせています。
イチローしかり、タイガーウッズしかりです。あるところまでは強制力によって「好きにさせる」ことが教育でもあり、指導でもあるのです。親がそれを怠ったがために、あたら子供の優れた能力が開花しなかったこともあろうかと思います。
人間しかない能力の一つに「好きになる能力」があります。動物にはない能力です。大人になって「好きになる能力」を自分で磨くことは修養の一つ。
それは自分でしか磨けないものです。つまり、自分で自分に強制力を発揮できる人は、何かを達成できる人です。
・巡ってきた仕事を真正面から取り組み。自分の創造性を発揮し
て独自の結果を出そうとする人
・人がわずらわしいと敬遠するような仕事でも嫌な顔せず、平気
で片付けようとする人。
・好調だった仕事から望んでいない仕事に配転になっても、すぐ
溶け込もうとする人。
・与えられた仕事をすぐ天職のように思い、全力で全うしようと
する人
・ お客さまに奉仕することを自分の喜びとして感謝できる人 など
このような人は、好きになる能力の高い人です。嫌いを少なくする努力を怠らない人です。それにより、心も高められる気がします。嫌いの少ない人にはなかなかなれませんが、好きになる能力を磨くことは嫌いの減少につながります
それは、嫌わない能力、嫌われない能力かも知れません。
また、自分の支配下にない景気や天気のことを悔やんだり、自分自身に関する他人に無関係なマイナス言葉を言わない努力も、自分の修行になります。
例えば、つまり夏に「暑い」、冬に「寒い」、疲れても「疲れた」などを言わない努力の継続は、何か良い方向へと導くようです。マイナス言葉は、周りに同調を求めること。知らず知らずに「不快感」を撒き散らしていることを自覚すべきです。それは、自分のストレスを人にも押し付けていることにもなります。
また、
・ 人の悪口を言わない
・ 人が嫌がることはしない
・ 日常のことは人の決定にしたがう
・ どうでもいいことには反対しない。いいなりになる。
などは、嫌われない能力アップの方法でしょう。
言わないでおくことは、思いやりにつながり、嫌いという玉を飲み込むことにより心が広がり、心の温かさが増すことでしょう。
イギリスの思想家ラッセルがいうように好きが多い人は嫌いが多い人よりも幸福です。なぜなら、あるものが好きな人はきらいな人の知らない快楽を知っているのです。その方が楽しいし、住む世界によりよく適応していることになるからです。
「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる」のです。
意識して、多くの好きを作ろうとすること。そして、それを続けることです。
論語に、君子が政治を行う際の訓えとして「五美」があります。これは経営者など上に立つ者の心得であり、人に好かれ、さらに敬愛されるための金言であります。
一.恵(けい)して費(つい)えず。 (下に施(ほどこ)しても、十分利益あり無くならない)
二.労(ろう)して 怨(うら)みず。
(人にどんなに仕事をさせても、怨まれない)
三.欲(ほっ)して 貪(むさぼ)らず。
(欲はあるが、貪ることはない)
四.泰(たい)して 驕(おご)らず。
(泰然として、驕らない)
五.威(い)あって 猛(たけ)からず。
(威厳に満ちて、荒々しくない)
あれも嫌い、これも嫌い・・・だから嫌われる