PRTIMES MAGAZINE 創刊3月号に「新型コロナ」への対応に関する投稿記事掲載
【有識者コメントまとめ】新型コロナウイルスに対する企業の情報発信はどう対応する?
連日報道されている新型コロナウイルスのニュース。企業における大規模なリモート対応や大型施設の閉館、政府より要請された全国規模の臨時休校など、わたしたちの生活に多大な影響を及ぼしています。
日々刻々と状況が変化するなか、自社をとりまく関係者、ひいては社会に対して情報発信を行う役割の広報PR担当者は、平時以上に冷静かつ迅速な対応が求められます。では、危機管理の観点からどのような点に気を付けて行動するべきなのでしょうか。
本稿では「情報発信」に従事する皆さまに向けて、広報やブランディングのプロフェッショナルである4名の方々から、危機管理に関する考え方や行動のアドバイスについてコメントを寄せていただきました。今後の広報判断の一助として、是非お役立てください。
特に以下のポイントについて、4名の方にコメントを頂いております。
- 新型コロナウイルスに世間の注目が集まる中で広報PR活動(コロナウイルス関連/一般情報含め)はおこなうべきでしょうか
- どのような広報PR活動(新型コロナウイルス関連/一般情報含め)をおこなうべきでしょうか
- 情報発信をおこなう場合は、どのような点に気をつけるべきでしょうか
- 自社が新型コロナウイルスへ何らかの対策をとった場合、どのように発信するのが良いでしょうか
会社の「公式見解」を作成し、社内外に発表することを推奨
(山見 博康さん)
山見氏:「広報は、人(自分)と会社を一致させよ!」が私の思想です。会社を親、社員を小学生以下の子供、関係会社・協力会社等を親戚とするならば、まず子どもは、物事への恐れを知らず、何をやるべきかも分かりません。ですから、親、つまり会社(広報)の立場としては、的確・正確な知識を与え、公的な根拠を示しながら、最悪の事態も想定して必要な手を打つ必要があるのです。危機に遭遇した時、親としてどんな言動すれば尊敬される・頼られるか?を考えれば判りやすいでしょう。

今回の新型コロナウイルスは、企業不祥事や事件・事故と異なり、天災・災害と見なし、全社・社員一丸となって、迅速かつタイムリーな“危機対応”を行う必要があります。そのお手本として、NHK「ダーウィンが来た!」で動物の厳しい危機対応法をじっくり観察し学ぶのもひとつといえます。
広報としては、まず「緊急対策本部」を設置し、“情報基地”としての機能を果たしましょう。刻々と変化する政府発表資料や新聞・テレビ等からの情報により、会社としての基本的な考え・対応を、その都度統一する必要があります。その上で社員に対しては、取るべき「対応」の指示をしましょう。出来るだけ個々の判断に委ねないことが大切です。(例:熱が37度以上の場合は休む、マスク着用、手洗い・うがいの励行など)
また、状況に応じて会社の「公式見解」を作成し、顧客・取引先・官公庁・IR関係・主要銀行に加えて社内各部署にも、夫々の部署から伝達すると共に、自社コーポレートサイトに文書を掲載。メディア向けには「公式見解」をもとに適切なニュースリリースとして公表するなど先手を打ってタイムリーに対応しましょう。社外公表は、積極的に行うことを勧めます。社内外に発表することで、会社の姿勢を統一見解として公式に伝える(あるいは伝えようする)姿勢が明確になり、不安を除き、危機への積極的対応を全社で統一して対処・克服することができるからです。
その要諦とは「真の雄弁とは、言うべきことを全て言い、かつ言うべきことしか言わないところにある」(ラ・ロシュフコー)として、ニュースリリースは公式文書故に、伝えるべき数字や表現を含む必要事項を網羅することが肝要です。それによって、①記事の語尾がばらつかず統一できる、②反対のことを書かれたら訴訟する権利を留保できる、のです。
巷間、“ニュースリリースには最低限記述し、Q&Aで対応”との風潮も散見されますが、これは、記事の本質を理解していないと言わざるを得ません。企業の真意・意図・戦略が明確に現れる語尾の表現こそ、記者に委ねてはいけません。大変危ういことです。
そして、「先走らないこと」も重要です。過剰に不安を煽ることのないよう、公式見解を重視し根拠を明確にします。政府からの発表に呼応して、“直ちに”手を打つスピード感と共に、上意下達で社内対応を徹底することが必要です。
そこでは、「或ることをなしたために不正である場合のみならず、或ることをなさないために不正である場合も少なくない」(アウレーリウス『自省録』)ことを肝に銘じ、“不作為の罪”を犯さないように、考えられる好転の手を着実に打つのです。
山見 博康さん プロフィール
広報PR・危機対応コンサルタント
1968年九州大学経済学部卒業。神戸製鋼所入社、秘書室広報係長・課長・次長・広報 部長、ベンチャー企業及びコンサルティング会社出向を経て2002年に独立。米国ダートマス大学経営大学院マネジメントプログラム修了。3カ国10年に及ぶ海外駐在や大小企業における豊かな体験と有力企業の広報担当者、有力メディア幹部との広範なネットワークを活かし、常に先端情報を交えた実践的な指導には定評がある。 主著に「広報の達人になる法(ダイヤモンド社、2005年)」「広報・ PRの基本(日本実業出版社、2009年)」「企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル(自由国民社、2013年)」。「新版広報・ PRの基本(日本実業出版社、2020年)」「広報・PR」関係の著書は15冊超で論文多数。