ビジネス誌「財界2021年10月6日号ずいひつ「「地域スポーツ」という社会インフラを作り変えたい!
元モントリオール五輪バスケットボール日本代表で、かって慶応大ー日本鋼管のスター選手で
日本リーグでも何度も優勝の立役者になるなど大活躍した桑田健秀(きよひで)さんが、ビジネス誌「財界」ずいひつ欄に想いの丈を語りました。
バスケ狂の私としても応援しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・IMG_20210919「財界10月6日号」ずいひつ「地域スポーツ」という社会インフラを作り変えたい「桑田健秀ピボットフット理事長・元モントリオール五輪バスケ日本代表」_0001
「地域スポーツ」という社会インフラを作り変えたい!
桑田健秀くわた・きよひで
[ピボットフット理事長・元モントリオール五輪バスケットボール日本代表]
東京オリンピック・パラリンピックを通じて、コロナ禍での無観客という前代未聞の状況下であっても、オリンピアンが躍動する勇姿を垣間見て、スポーツの可能性を感じた方は多いのではないでしょうか。
いま、日本のスポーツビジネスは転換期を迎えています。私が現役のバスケットボール選手だった頃に比べると、スポーツを行う環境は充実しています。実際、全国には3000近くのスポーツ協議会があり、社会インフラの一つになっています。ところが、せっかく構築したこのインフラをうまく活用しきれていないのが現状なのです。
スポーツで生計を立てられるようにしたい――。これが引退後の私のミッションです。成熟した日本に置いて、これまでのような学校体育や企業スポーツだけで成立させることは非常に難しい。その要因として、スポーツを通じてしっかり採算をとるという事業性を考えるリーダーがおらず、それに携わる関係者も行政からの補助金に依存してしまうことに抵抗を持っていないことが挙げられます。
地域で行われているクラブ活動。そのクラブに通う人たちはプロから本物を教わりたいと思っているはずです。その一方でスポーツ一筋で生きてきたアスリートたちが第二の人生を歩もうと模索する日々を送っています。また、企業もSDGsやESG経営の一環として地域貢献を行いたいと考えています。
スポーツはこういった様々なステークホルダー(利害関係者)を地域でつなぐ“横ぐし”になると思っています。種目をまたぐスポーツ自体の横ぐし、教育、子育て支援、高齢者福祉、産業振興といった縦割りの行政組織の横ぐし、そして地域行政、地域企業、地域住民をつなぐ横ぐし。この3つの横ぐしを使って地域をつないでいけるのです。
私はモントリオール五輪出場から26年が経った2002年、日本鋼管を辞めて地域スポーツの活性化に寄与しようと無収入からスタートしました。
実際に自分でやってみると、次々と地域スポーツの課題を感じました。「地域スポーツのインフラを作り変えたい」。自然と自分が目指すべき目標が定まってきたのです。49歳のときに当法人を設立し、今では年間約2000回のスポーツ教室を開催する地域スポーツクラブになりました。種目もバスケットボールだけではありません。チアリーダーやダンスなども行っており、指導するのはその道のプロです。
さらに地元の大田区という共通点から「企業対抗運動会」を企画・開催。大田区は日本有数の中小企業集積地で、約4千の中小企業があります。こうした地域性を生かし、企業ごとにチームを結成した運動会も開催したりしています。健康経営がテーマである企業にとってもメリットを感じてもらえました。
こういった取り組みは全国どこでもできるはずです。ただ、そこで重要になってくるのが指導者のマネジメントの能力です。単にスポーツができるだけではいけません。相手の立場に立ってお互いがウィン・ウィンとなる提案ができなければ、周囲を巻き込むことはできません。
何よりもスポーツは子供を心身ともに成長させるものです。それはスポーツにしかできないと思っています。スポーツは子供の成長はもちろん、コミュニティづくりにも社会課題の解決にもつなげることができる可能性に満ち溢れたものなのです。いかに周囲を巻き込んで盛り上げていくか――。
その軸足(ピボットフット)になることが私の役割と使命だと思っています。